製紙メーカー APP > 環境・社会への取り組み(CSR) > CSRニュース > 【抄訳】 アジア・パルプ・アンド・ペーパー 持続可能性担当役員 アイダ・グリーンベリー寄稿文 (edie.net) 【2016年4月27日】

【出典】 edie.net 
http://www.edie.net/blog/What-the-new-EU-Indonesia-timber-agreement-means-for-our-forests-our-communities-and-the-future-of-global-trade/6098028
 
森林、地域コミュニティ、今後の国際取引にとってEU-インドネシア間の新木材協定が意味するもの”

政治家の言葉と現実の間には大きなズレがあるのが常である。しかし、先日ブリュッセルで行われた会議は、必ずしもそうでないことを教えてくれた。

インドネシア大統領ジョコウィ氏と欧州委員会委員ジャン=クロード・ユンカー氏は、インドネシアと欧州連合との間で林産物に関する「二国間協定(Voluntary Partnership Agreement/VPA)」を開始することで合意した。外部の人間にはよくわからない決まりごとのひとつに見えるかもしれないが、これは実際のところ、持続可能性と環境保全について国と国がどのように協力すべきかを見直す、画期的な政策決定なのである。

木材規制の飛躍的な前進は時節にかなった動きである。この10年、先進国でのインドネシアの林産品に対する需要は高まり続け、それが同国の自然林の損失を助長することになった。木材規制は、深刻化するそうした世界の貿易体制のひずみに対処するものだ。インドネシアからEUに輸出される林産品の市場は、過去10年で飛躍的に拡大してきている。

2014年にインドネシアからEUに輸出された木材製品は6億4,500万ドル分に達し、前年に比べて9%増加した。一方で、違法伐採による計り知れない影響をもたらしてきた。インドネシアの汚職防止委員会の報告では、2003年から2014年にかけて6億2,900万㎥もの木材が闇市場に消えており、インドネシア政府は数億ドルの税収を失った

違法伐採は環境を破壊し、CO2排出量を増加させ、地球温暖化を助長するにとどまらず、地域コミュニティの生計手段を奪い、地域および中央政府の大切な税収を消失させ、犯罪行為を蔓延させるものである。

今回の二国間協定はこの問題の解決策を見出そうとする試みだ。これはEUの「森林法、施行、ガバナンスおよび貿易(Forestry Law Enforcement Governance and Trade/FLEGT)取り組み」の手段であると同時に、違法材をEUに混入させないことを目的とした「欧州連合の木材規制(European Union Timber Regulation/EUTR)」の一部でもある。そして、インドネシアはEUと有効な二国間協定を結ぶ世界初の国となるだろう。

今回の二国間協定の完全実施は、民間企業、NGO、欧州の政策立案者、インドネシアが協力し、インドネシアの木材合法性保証システムである「SVLK」をEU基準に合致させようと取り組んできた長期的なプロセスの集大成である。二国間協定が実施されるということは、インドネシアの木材規制システムがEUの同システムと同等であると承認されたに等しい。こうして承認されたことで、欧州の輸入業者は船荷ごとのデュー・デリジェンス(詳細な調査)という複雑なプロセスを行う必要がなくなり、インドネシアの木材輸出には他の輸出国を超える競争優位性が付加される。

では、二国間協定の完全実施が意義深いのは何故なのか? それは、壊滅的な気候変動の回避に不可欠な森林保護に向けた貿易協定の締結に向け、木材に関係する世界中の消費者、供給者、市民社会、NGO、政府が初めて共同で取り組んだからである。現在の段階に到達するために、前述の関係者はそれぞれが欠くことのできない存在だった。欧州の消費者はもはや、自分たちが手にする木材がサプライチェーンから除外されたものではないかと訝しんだりはしない。APPやカーギルのようなインドネシアの供給業者も二国間協定を推進してきたが、それは過去の伐採活動が持続可能ではなかったと気づいたためだ。インドネシア政府とEUは、NGOの助言を受けながら、協定の枠組みについて交渉を続けてきた。

APPは10年前からSVLKと二国間協定を強力に支援してきた企業の一社である。当社は2009年に初めて植林地とパルプ工場でSVLKへの試験的取り組みを開始し、インドネシア政府と共に同システムの改善方法を模索してきた。また、当社はSVLKへの完全順守に成功した初の企業グループであり、林産業界、政府、NGOステークホルダーと密接に連携してSVLKの基準を最大限に堅固なものにすると共に、SVLKの要求事項を満足できるように当社サプライチェーン内の小規模事業者への支援を開始するなど、林産業界内の能力開発に努めてきた。

インドネシア最大の紙パルプ企業として、私たちは当初から、インドネシアにとって良いことは当社の事業にとっても良いことだと考えてきた。世界基準をインドネシアの規制枠組みに組み込むことで、我々の製品価値は上がり、新たな市場で成長できるのである。

ここに至る道のりは平坦ではなかった。インドネシアは2012年にSVLKの全国展開を開始した。巨大製紙工場から小さな彫刻職人に至るさまざまな関係者が関与するため、その作業は極めて複雑であり、数百の島々の数千もの企業に対応しなければならなかった。実際、「執行が不完全だ」や「小規模事業者は認証費用を工面できない」といった声もあり、SVLKは有効に機能するのかという疑念が欧州の多くの団体から上がった。

問題が大きすぎると思ったのも一度や二度ではない。それでも最終的には、SVLKの批判や二国間協定に関する悲観的意見は同システムを改善する有用なツールとなった。インドネシアは課題に立ち向かい、そうした批判を受け入れ、SVLKをより強固なものにしていった。わずか数年で林産業界の認証取得率がゼロからほぼ100%となったのは、目覚ましい功績である。

現在の課題はこの変化を活用し、取引を増加させるだけでだけでなく、継続的にSVLKシステムを向上させていくことだ。インドネシアの二国間協定はEUと二国間協定を結んで監視システムを開発しようとしている他の5ヶ国の取り組みに拍車をかけるものであり、現時点でさらに9ヶ国が二国間協定の交渉に臨んでいる。インドネシアは今後も引き続き、この一団を先導していかなくてはならない。

取り組みはここで終わらない。合法性は重要だが、持続可能な活動をより高いレベルで保証するFSC*1やPEFC*2といった自主的認証スキームも同じく重要だ。しかし、我々は法の順守や認証を超えて前進する必要がある。環境やインドネシア国民、地域コミュニティ、そして当社の事業に最大の恩恵をもたらすべく、我々はさらに厳格な基準を導入すべきなのだ。外部の賛同者や活動家の意見に踊らされてそうするわけではない。それが企業収益に利となるから導入するのである。

今日の世界市場では、製品の原産地や職人によって付加される価値だけでなく、生産方法の持続可能性によって製品の質が判断されている。衛星を使って、パリに居ながらにして森林が伐採される様子を監視できるこの時代、地理的な距離は何もしないことの言い訳にならない。

二国間協定の完全実施は大きなチャンスであり、インドネシアおよび欧州の林産業界、政策立案者、NGOの努力の賜物である。インドネシアは最後までこの競争を続け、事業活動、顧客、環境、国民に最善の結果をもたらす新たな基準を策定しなければならない。

二国間協定は、森林保護と責任ある国際取引の新基準を策定にするにあたっての突破口である。取り組みは決して終わったわけではなく、まだ始まったばかりだとAPPは認識している。より早く、より遠くへと到達すべく、我々は今後も尽力していくつもりだ――願わくば、貴方と共に。

*1 FSC: Forest Stewardship Council

*2 PEFC: Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes

 

 
アジア・パルプ・アンド・ペーパー・グループ(APP)

持続可能性担当役員

アイダ・グリーンベリー

 



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