製紙メーカー APP > 環境・社会への取り組み(CSR) > CSRニュース > 2015年10月2日付 日本経済新聞 朝刊:インドネシア煙害報道における一部誤認について

 2015年10月2日(金)付日本経済新聞 朝刊(9ページ)において、「煙害で曇るビジネス」と題した記事にて、「シンガポール政府は原因企業5社(アジア・パルプ・アンド・ペーパー・グループ(APP)など)に制裁を科すと発表した」との報道がありましたが、一部表現に同紙の事実誤認がございましたので、ここにご報告させていただきます。
関係者の皆さまには、多大なるご心配をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。

 なお、本記事内容について、同紙編集局に確認しましたところ、情報源はシンガポール政府(以下、シ政府)のホームページで発表されたニュース記事*1とのことでした。
しかしながら、シ政府は、本記事で掲載された対象企業4社*2及びAPPに対して「制裁を科す」とは述べておりませんので、ここに訂正させていただきます。

以下はシ政府のホームページによるニュース記事の概要になります。
● シ政府の発表内容は、対象4社の管理地(コンセッション)内の火災が原因で煙害が生じている可能性があると言及。
● 現在、対象4社に対して、シンガポール環境庁(NEA*3)が国内法*4に則り、消火活動の実施や今後の再発防止計画の
  実行を要請
  1. 自社の管理地において、消防士の配置による消火と延焼の食い止め
  2. 管理地内における火入れ活動の停止
  3. シンガポール国家環境庁(NEA)に、消火活動及び再発防止に関する計画の提出
● APPに対しては同法に即して、同社のシンガポールやインドネシアの子会社から情報を集めること、及びAPPのサプライ
  ヤーの管理地内で発生している火災を消火するよう通知。

現在、APPではNEAの通知に対して、適切に対応すべく関係各位と調整を行っています。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*1 シンガポール政府ホームページ;
Singapore sends notices to four Indonesian companies and seeks information from Singapore-listed APP (25 September, 2015)
和訳:“シンガポール政府は、インドネシアの4企業に通告(notice)を送付し、シンガポール上場企業のAPPからも情報を求めている。”(2015年9月25日付)
URL:http://www.gov.sg/news/content/singapore-sends-notices-to-four-indonesian-companies-and-seeks-information-from-singapore-listed-app

*2 対象企業4社 PT Rimba Hutani Mas、PT Sebangun Bumi Andalas Wood Industries、PT Bumi Sriwijaya Sentosa、PT Wachyuni Mandira.

*3 National Environment Agency

*4 Transboundary Haze Pollution Act 2014年施行

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<APPの森林火災への取り組みについて>
※詳細は別紙ご参照「Fact sheet: 森林火災」

 APPは森林火災をとても深刻に捉えています。既に1996年より、植林地を開墾する際には火を使わない「火入れ禁止方針(Zero Burning Policy)」を導入し、すべてのサプライヤーに徹底させています。また、2013年に発表した「森林保護方針」では、「自然林伐採ゼロ方針(Zero Deforestation)」を誓約し、以来APP及びAPPのサプライヤーは植林地開発のための自然林伐採を一切行っていません。

 森林が基盤の企業として言えることは、森林を燃やすことから得るものは何もないということです。APPのパルプ材用植林地には、事業活動を行うための膨大な投資が行われています。一方で、消火活動など森林火災に関わる費用は毎年膨大になり、火災によって植林地は大きな被害を被っています。従って、APP及びAPPのサプライヤーが、自らの収益に関わる植林地に自ら火をつけて森林火災を起こすということも経済的にもまったく意味をなしません。

 東南アジアの煙害の原因となっているインドネシアの森林火災は、とても複雑に問題が絡み合っています。そこには、地域コミュニティの土地権利、零細企業による違法行為、そして根本的な複雑性を生んでいる土地使用権、土地の区分け、土地所有権と自然保護の問題が含まれています。

 APPは、今回のシンガポール政府からの通知への対応も含め、引き続きあらゆるステークホルダーとともに、煙害にも関わる森林火災の予防と長期的な解決策を追及していきます。

以上

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※別紙
森林火災に関するファクトシート
2015年8月更新
1 森林火災は何故起きるのか?
 インドネシアで毎年発生している森林火災と煙霧の問題は、事業の上でも企業の評判を守る上でもAPPにとって大きな問題である。森林火災は野生生物の生息域や大量の炭素を貯留している森林や泥炭地を損なうものである。また、火災はパルプ材植林地(コンセッション)まで拡がり、当社の事業に財政的な損失をもたらす。

 当社の過去のデータによると、パルプ材供給会社のコンセッションに影響を与えた火災の大部分は以下の事項に関連するものである:
 小規模農業の「焼畑」
 地域の農業に関わる土地の開墾――油ヤシ/ゴムの木の栽培
 移動耕作
 地下の泥炭地火災
 土地クレームの経済的補償にまつわる放火
 失火――火のついた煙草の投げ捨てや調理用の火種の放置

2 ホットスポット(火災頻発地区)とは?
 ホットスポットのデータは火災発生場所の良き指標である。しかし、すべての火災が森林火災というわけではなく、ホットスポットのデータは火災発生の理由や経緯を説明するものでもないことに留意しなくてはならない。ホットスポットは大規模な屋内火災や産業活動、あるいは水や金属の反射によってさえ引き起こされうる。火災が現在も続いているか、どのようにして発生したのかを確認するには、現場検証が必要となる。

3 APPと森林火災対応
 林産業に関わる企業として、APPが土地を燃やすことで得るものは何もない。当社のパルプ材植林地は当社の事業活動が依存している巨額の投下資本であり、APPのような林産企業が自らの資源に意図的に損害を与える理由はまったくない。

 つまり、火災はAPPにとって経済的な脅威であり、その対応には多くの費用と資源を費やしている。加えて、火災による損害は従業員や操業地区の地域コミュニティを苦しめ、保護しようと我々が投資してきた森林を脅かすものである。

 APPとパルプ材供給会社は森林コンセッションの火災を検知し、消火を行うための装備や技術、人的資源に多額の投資を行ってきた。その地域は極めて広大であり(スマトラおよびカリマンタンに設立された植林地は約100万ヘクタール)、以下のさまざまな検知技術で火災を検出している:遠隔検知システム;火の見やぐら;ヘリコプターによる上空パトロール;地上パトロール;地域コミュニティとの協力

 2013年、APPとパルプ材供給会社は火災の検知およびその対応、人材の育成に400万ドル以上(設備投資額を含まない)を費やした。また、APPとパルプ材供給会社は森林コンセッション以外の場所でも防火取り組みを支援している。

3.1 防火
3.1.1 会社の対応方針
 APPは1996年から整地における火入れ禁止方針を、2013年2月から「森林伐採ゼロ方針」を実施している。APPのパルプ材供給会社はこうした方針が忠実に守られるよう、社内および土地開墾や再植林、植えられた樹木のメンテナンスを請け負う外部業者に対し、この方針を周知している。そして、すべての関係者に土地の開墾に際して火を使うことを禁じる契約書に署名させ、失火を防止するベストプラクティスの順守を徹底させている。

この方針はその後、森林保護方針によって補強され、サプライチェーン全体においてさらなる森林伐採のすべてが即時停止とされた。

原料供給会社の規制順守
 2014年、インドネシア政府は森林火災対策本部を通じ、森林火災防止戦略の順守状況の監査を実施した。この監査に基づいて、APPとシナルマス・フォレストリーは森林火災を未然に防ぐことを目的とした政府の法的要求事項について、森林管理ユニット(Forest Management Unit/FMU)の順守状況の内部監査を行った。この要求事項は、政府の森林火災防止戦略の順守状況の監査において設定されたパラメーターに基づくものである。

APPの全パルプ材供給会社はこの監査で最低80スコア(順守)を取得することを目標としている。

森林脅威のマッピング
 毎年、APPの原料供給会社は森林脅威のマッピングを見直し、更新している。この地図の目的は第三者による森林伐採が発生しがちな地域を見つけ出すことにある――森林脅威には、森林火災、不法侵入、違法伐採、密猟、資産窃盗による脅威も含まれる。

地域は下記基準に基づいて、森林火災の脅威にさらされていると区分されている
a. 地域コミュニティによるアクセスのしやすさ(陸路/水路)
b. 最寄りの地域コミュニティ集落やコミュニティ植林地までの距離
c. 過去一年間の火災発生頻度
d. 過去二年間に発生した火災の発生現場までの距離

3.1.2 施設/装備
 APPは、原料を供給しているコンセッション内部、およびその周辺の森林火災問題に対処する取り組みに多額の投資を行ってきた。
a. 社内消防隊、消防保安官、警備員、地域コミュニティのメンバーなどを含む消防人員(RPK)2,800名以上
b. 地域コミュニティを対象にした防火意識向上(MPA)プログラムを通じた地域コミュニティの教育。現在までに、159の村々の2,600名以上に対して実施。
c. 防火装備:
i. ヘリコプター2機
ii. 火の見やぐら56塔。監視カメラ付きのものもある。
iii. 消防車34台
iv. 移動式放水ポンプ698台
v. 水上放水ポンプ台15台
vi. 放水艇5艇

3.1.3 地域コミュニティの防火意識向上(MPA)教育
 火災の多くは、手っ取り早く、安価に土地を開墾し、小規模な酪農や農業を営みたい個人によって引き起こされている。火災に関する問題意識の向上は、こうした慣習を削減すると共に火災発生時に迅速な対応ができる可能性を向上させる。

 このように、APPと原料供給会社は地域の政府や自然保護機関と協力し、地域コミュニティ防火意識向上(MPA)プログラムに取り組んでいる。MPAはコンセッション地域周辺の村々159ヶ所以上で実施されてきた。MPAは火災の危険について地域コミュニティのメンバーを教育する任を負い、防火と火災検知活動を補佐するものである。

3.1.4 泥炭地と水位の管理
 極度の、あるいは長期にわたる干ばつの期間、泥炭地の水位は極めて低くなり、土壌表面に空隙が増加する――特に、高井泥炭地や丘陵の頂上部にある泥炭地区では、土壌がもろく多孔質となる。この状態の泥炭土は非常に引火しやすい。

APPの原料供給会社は泥炭の引火を防ぐため、水位を保持し、泥炭土を湿った状態に保つ取り組みを行っている(再湿潤化取り組み)。

 泥炭地の水位を保持するため、原料供給会社は遠心力ポンプを使って川や池などの水源から泥炭地域を走る水路に水を運んでいる。池は水を常時使用できるように川の支流や水路に沿って作られており、火災が発生しやすい場所では、容易に壊せて持ち運びができるビニール樹脂製の移動式貯水槽を利用できるようになっている。

 乾季の間、湿度を保つために、毎週、泥炭土の再湿潤化が行われている。リアウ州では、プラウ・ムダ・シアク、ブキット・バツ、ガウン地区のコンセッション地域全体でこの再湿潤化取り組みが実施されており、その総面積は20万クタールに及ぶ。

 担当チームはコンセッション内の地域の再湿潤化だけでなく、油ヤシが植えられている地域コミュニティの土地――特に、延焼の原因となる当社のコンセッション地域との境界――においても再湿潤化も実施している。

3.2 発見
3.2.1 リモートセンシング
 ホットスポットデータの遠隔探査により、火災を迅速に発見・調査することができる。ジャカルタのGIS(地理情報システム)チームが、アセアン気象専門センター(ASMC)のNOAA衛星、シンガポール国立大学リモートセンシングセンターのTERRAおよびAQUA衛星から1日2回送信されるデータを植林地にマッピングし、午前と午後の毎日2回、関係地域に配信する。

 2015年、APPは世界資源研究所(WRI)との連携を開始し、ホットスポットの監視を強化するためにWRIのグローバル・フォレスト・ウォッチ監視システムを利用している。火災の危険を感知すると、担当地域の消火責任者に連絡が届き、現場検証がおこなわれる。現地に直接連絡がいくことで、現場責任者は本社のデータ解析を待たず、迅速に対応できる。

3.2.2 パトロール
 森林火災シーズン中は、火災が発生しやすい植林地の境界線や植林地内部の交通網を中心にパトロールがおこなわれる。

 パトロールの目的は以下の通り:
i. 衛星によるホットスポットデータの検証
ii. 違法行為の発見
iii. 火災発見と迅速な対応
iv. 地域コミュニティとの情報共有および啓発

 火災の危険性が高い場合、現場パトロールはヘリコプターを使って上空から実施する。2015年より、パトロールチームはマッピングで特定された火災頻発地域に常駐し、より効果的かつ効率的なパトロールを実施している。マッピングはAPPの原料供給会社によって毎年見直されている。

3.3 対応
 火災の規模、地域、種類によって使用する装備、技術、トレーニング方法も変わってくる。初期段階で発見できれば、大半の火災は少ない人員と装備で鎮火できる。

 多くの火災は地域コミュニティと植林地域の境界で生じ、通常、地上で消火活動が行われる。しかし火災の規模が大きく、重要な地域が危険にさらされている場合、正確かつ迅速に散水することができる、空中用消火バケツを積んだヘリコプターが地上での消火活動を支援する。

3.4 最新消火技術
3.4.1 東カリマンタンのドローン
 APPは火災発見技術に注力し、最近では消火活動にドローンを活用している。2012年より、東カリマンタンにある33万4,000ヘクタールの植林地域に固定翼ドローンを配備し、火災や煙の発見に努めていたが、2014年に操作性に優れたマルチロータードローン5機にこれを入れ替えた。ドローンの導入により、消火チームの俊敏性は著しく向上した。

3.4.2 リアウの移動式貯水槽
 リアウ州のパルプ材サプライヤーであるアララ・アバディーは、移動式貯水槽というコンセプトを導入した。これは水源から離れた泥炭地で火災が発生した場合、地下から速やかに水源を得るというアイデアだ。深さ3メートル以上の高水位泥炭地で、孔のあいた細いパイプを地下1.5メートルの深さに通して水を引き、そこから手動ポンプで火災地点に散水するという仕組みだ。

4 課題
 森林火災への効果的な対応については、いくつかの課題がある。まずAPPの原料供給会社が事業活動を行っている膨大な規模の植林地面積だ。APPのパルプ材供給会社はスマトラとカリマンタンに所在する約100万ヘクタールの植林地で事業活動を行っており、すべての地域を同時に監視するのは不可能である。また、特定された地域が本当に検証に値するか判断する際の、衛星データの正確性についても課題が残る。検証を要する地域が複数生じた場合、どの地域を優先すべきか難しい判断に迫られるケースもある。

 さらにAPPには民間企業として政府の法律に準拠するため、警察や地域政府に協力する義務がある。

 多くの森林火災は手っ取り早く、安価に土地を開墾し、農業を営みたい個人によって引き起こされるため、その根底には文化・経済的要因が存在する。課題解決には複数のステークホルダーによる協力が必要である。そのため、APPはNGO、企業、コミュニティ、政府などのステークホルダーによる課題解決に向けた協力を歓迎する。




PAGETOP