【2020年10月23日】
グリーンピースは今回の報告書を発表する前に、APPの見解を共有する機会を与えて下さいました。これを受けて、APPは事実に基づいた訂正を行うと同時に、当社の見解をグリーンピースに伝えました。またAPPは、同報告書で取り上げられている問題について、報告書の中で言及されていない情報を伝え、その背景を詳しく説明するために、話し合いの場を設けてほしいとグリーンピースに依頼しました。
当社はその後公開された報告書を細部まで検証しましたが、グリーンピースは当社が提供した情報をほとんど反映させていませんでした。そこで当社は以下の情報をここに公開し、先にグリーンピースに提供した資料を皆さまと共有すると共に、この問題について――特にAPPの森林保護と防火取り組みの実態について――明らかにしたいと思います。
APPの原料供給会社
事前にグリーンピースからAPPに送られてきた報告書に記載された情報には、いくつかの誤りがありました。はっきりと申し上げますが、以下の企業は当社のサプライチェーンに入っておらず、取引契約を結んでもいません。
*Kirana Chatulistiwa社
*PT Hutan Rindang Banua社
*PT Bangun Rimba Sejahtera社
Artelindo Wiratama社(AW社)も同様にAPPの原料供給会社として挙げられていましたが、これは誤りです。AW社は現在、APPのサプライチェーンに加わる前に必ず実施しなくてはならない「原料供給会社の検証とリスク評価(Supplier Evaluation and Risk Assessment/SERA)プロセスの最中ですので、今回の報告書の調査対象期間中は当社の原料供給会社ではありませんでした。
社名、住所、伐採権保有地の面積、高保護価値(High Conservation Value)および高炭素貯蔵(High Carbon Stock/HCS)評価の実施状況など、APPのすべてのパルプ材供給会社の伐採権保有地に関する詳細な情報は、APPの持続可能性ダッシュボードで公開されています。
https://sustainability-dashboard.com/supplier-management/pulpwood-suppliers
また、インドネシアのすべての林産企業とAPPとの商業的なつながりに関する2019年の報告書もご覧いただけます。
https://sustainability-dashboard.com/documents/115225/126520/APP+ASSESSMENT+ON+ITS+LINK+WITH+INDUSTRIAL+FOREST+PLANTATIONS+IN+INDONESIA.pdf/327bda1c-f4ff-b9cd-91c1-c737385b07c0?t=1594640759437
APPの原料供給会社に対する制裁
グリーンピースはまた、今回の報告書の中で制裁措置を指標として使っていますが、これは誤解を招く可能性があります。
インドネシア政府が森林火災事件の結果として企業に課す制裁のレベルは下記のように多岐にわたっています:
1. 管理面での制裁: 企業が法令を順守していることを確認するための調査を推進し、包括的な報告書を提出することを企業に義務づける。
2. 事業活動における制裁: 企業に対し、詳細な是正措置を実施することを義務づける。
3. 事業許可の凍結: 是正措置が完了するまで一時的に事業活動を停止させる。
4. 事業許可の取り消し: 企業が是正措置を実施できない、または実施する意思がない場合、事業許可を取り消す。
2015年から2018年にかけて、APPのサプライチェーン内の23社が管理面での制裁を受け、2社が 事業活動における制裁を受けました。2019年にAPPや原料供給会社に課された他の制裁はありません。こうした制裁はすべて、各社が課された義務を履行した後に解除されました。なお、2019年12月現在、APPと原料供給会社が調査を課せられている未解決のケースも刑罰もありません。この情報は説明の過程でグリーンピースにも伝えられました。
しかしながら、今回公開された報告書には、2019年の制裁3件を含む、合計33件の制裁措置があったと記されていました。
同報告書には、この情報の出所も比較に使われた原料供給会社の一覧も記載されていないため、グリーンピースがどのようにしてこの数字にたどり着いたのかは不明です。
インドネシアの森林火災
火災は関係者すべてにとって大変重要な問題です。保有する植林地の一部が火災の被害を受ける危険に晒されていた、もしくは現在も晒されているAPPと原料供給会社は、森林火災の被害者でもあります。
森林火災の原因は複雑であり、火災を未然に防ぎ、火災の発生を抑えて被害を減少させるために必要な解決策も同じく複雑です。森林火災を研究する方は、衛星写真や火災の跡を見るだけではなく、その背景にある問題について深く理解しなくてはなりません。
グリーンピースは、伐採権保有地における火災について、植林地の事業者が商業活動のために火を使って土地を整備している証拠であると考えているように見受けられます。しかし、APPとその原料供給会社は長年にわたって火入れ禁止方針を掲げており、今後も、土地を整備する際に火を使うことは決してありません。火災が発生した原因は伐採権保有者による土地の整備だという単純な推定は、あまりにも短絡的すぎて、相関関係や因果関係を誤認することになりかねません。森林火災が発生した原因や場所を把握することなく、また、火災発生地域の社会力学を考慮することなく結論を導き出すことはできません。グリーンピースが主張するように火を使った土地の整備が火災の原因となっているなら、ある季節に火災の被害に遭った地域において、その翌年にも火災が発生する理由を見つけるのは難しいでしょう。植林木は成木するまで5年もかかります。どの会社でも、自社の植林木を燃やす理由はありません。
またグリーンピースの主張では、伐採権保有地の外でも多くの火災通報があり、焼失した地域がある理由を説明することができません。それでは、なぜこのような火災が起きるのでしょうか? 世界資源研究所(World Resources Institute)が運営する公開プラットフォーム「世界森林火災ウォッチ」によると、乾燥していた2019年の火災通報の80%は、伐採権保有地の境界線の外側で記録されていました。また、火災後の土地を分析し、その土地で作物が栽培されている場合は、その作物の生育を調べることでわかることもあります。グリーンピースの最初の主張が真実であるなら、こうした調査を行えばより説得力のある証拠を示すことでしょう。
また、グリーンピースが報告書で用いた火災の発生件数は、壊滅的な森林火災が発生した2015年を基準年としたものであり、そのせいで2015年以降の重要な進展が見えなくなっています。報告書では2015年以降のデータが集計されていますが、2015年が集計範囲に入ることでデータに歪みが生じています。2015年以降、APPをはじめとする企業は2015年の災害を再発させないように、防火や火災の早期発見、事前準備、鎮火などの取り組みに莫大な投資を行ってきました。APPは総合的な火災管理に1億5,000万ドル以上を投資し、火災を監視し、火災に備え、消火を行う能力を強化してきました。こうした投資には、消火用ヘリコプターや消防車、消火支援車両といった設備に対して行った投資も含まれており、消防隊はこれによって火災が発生した際に迅速かつ効果的に対応できるようになりました。
現在APPには、訓練を受けた消防士3,000人以上を擁するインドネシア最大級の民間消防隊があります。2016年以降の4年間で火災事故が大幅に減少し、火災の脅威への対策において目覚ましい進展があったのは、主にこの投資のおかげです。あと数週間で乾季が終わりますが、2020年はAPPの火災対策において最高の記録を残すことになるでしょう。今年、火災の被害を受けた地区はわずかであり、消防隊は発生した火災の90%以上のケースで4時間以内に鎮火すると共に、火災の被害を2ヘクタール未満に抑えました。
最後に、今回の報告書は、火災問題を解決する際に他の関係者が関わっていることにも言及していません。また、地域の農業では火が使われていて、これが森林火災の主な原因のひとつとなっていますが、こうした火の使用を取りやめてもらうためにAPPのような企業が行っている地域活性化プログラムについても、グリーンピースは正当に評価していません。APPが総合森林農業システムの概念に基づいて立ち上げたDMPA(森林火災防止のための地域活性化)プログラムは、火災リスクに関する教育を行うと共に、地域農園での焼き畑農業を抑制する取り組みです。これは森林火災の主要根本原因である貧困に対処するものでもあります。
地域住民が持続可能でより良い生計手段を選べるようになれば、その生活を向上させるだけでなく、伐採権保有地とその周辺地域の火災リスクや森林伐採を減少させることができます。現在までに、390の村の31,000世帯以上がこのプログラムの恩恵を受けています。プログラムはまだ初期段階にあるため、現時点では長期的な成功を確認することはできませんが、実際の事例を見ると、すでに、持続可能な農業への変革に大きく貢献しているようです。
重要なことを繰り返しますが、森林火災は複雑な問題です。この問題を理解するには、ただデータを集計して、軽々に結論を出すだけに留まっていてはいけません。森林火災の問題をより深く理解し、火災の脅威への対処についてグリーンピースが関心を持ってくださるなら、APPは喜んで対話させていただきます。
グリーンピース報告書(英文)
https://www.greenpeace.org/southeastasia/press/44138/an-area-eight-times-the-size-of-bali-has-burned-in-indonesia-in-the-last-five-years-new-greenpeace-report-shows/
APP本社リリース(英文)
https://asiapulppaper.com/-/app-s-response-to-greenpeace-burning-issues-five-years-of-fire-dated-22-october-2020