WWFジャパンは4月19日におけるウェブサイト上の記事において、改革に向けたAPPの誓約に関する提言を行いました。APP/シナルマスはこうしてご提案をいただいたことに感謝しておりますが、当社が森林保護方針(Forest Conservation Policy/ FCP)の誓約を守っていないという申し立てには同意しかねます。また、この記事にあるいくつかの申し立ては事実ではありません。以下の通り、当社の見解を述べさせていただきます:
APPが「約200万ヘクタールの自然林破壊に関与」しているという主張について
APPと原料供給会社は自然林を植林地に転換してきましたが、これは法律を完全に順守した上で行ってきたことです。30年前、当社はインドネシア政府から、インドネシアの紙パルプ産業に投資し、発展させてほしいという要請を受けました。当時、自然林の転換は禁止されておらず、高保護価値(HCV)や高炭素貯留(HCS)のある土地という概念はまだ存在していませんでした。
こうした事情にも拘わらず、WWFジャパンはAPPが200万ヘクタールを超える自然林を転換してきたと主張していますが、これは不正確であり、実際にはありえないことです。APPと原料供給会社は約250万ヘクタールの伐採権保有地を管理しています。そのうちの60万ヘクタールは保護価値が高い(HCV)または多くの炭素を貯留している(HCS)土地であると特定され、2013年以降、環境保護のために植林開発から除外されています。また、それ以外に伐採権保有地の23%は地域コミュニティによる利用のために植林開発から除外されています。
開発除外地域のこの割合は、現在のインドネシアの森林規制が要求する割合を超えており、その結果、生産地として指定されているのは原料供給会社の伐採権保有地のおよそ半分の約130万ヘクタールのみです。当社が自然林の伐採を中止して森林保護方針(FCP)を立ち上げた2013年より前の自然林の転換を含めても、APPのすべての植林地が、保護価値の高い(HCV)や多くの炭素を貯留している(HCS)土地上にあると想定するのは、現実的ではありません。
2013年に森林保護方針を立ち上げたとき、当社は自然林の転換を根絶し、森林破壊と決別したサプライチェーンを維持することを誓約しました。いくつかの過ちはありましたが、これらは持続可能性監査機関やNGOステークホルダーに正式に報告され、その後に是正がなされており、APPが故意に森林破壊に加担したことはありません。
当社はWWFジャパンの申し立てを否定すると共に、当社の苦情処理メカニズムを通じて申し立ての証拠を提供していただけるようお願い申し上げます。ご提供いただいた証拠は第三者コンサルタントによる検証と監査を受け、ステークホルダー・アドバイザリー・フォーラム(年に2回開催され、WWFインドネシアも貢献してくださっている会議)で厳しく精査されることになります。
原料供給
一部NGOは3年前にもAPPの原料供給について根拠のない申し立てを行いましたが、今回の報告書でも同じ主張を繰り返しています。しかし、APPはこれについてすでに回答しています。
https://www.asiapulppaper.com/news-media/press-releases/app-response-joint-ngo-statement-5th-anniversary-asia-pulp-papers-forest-conservation-policy
FCPを立ち上げてから6年の間にはOKI工場(インドネシア南スマトラ州)の操業開始もありましたが、APPに供給されているすべての原料は今でも植林木パルプと認証パルプのみです。FCPを開始した2013年以降、当社と長期契約を結んでいる原料供給会社で森林破壊に関与した会社は1社もありません。すべての原料供給会社に例外なく当社の自然林伐採ゼロの規則を順守させるため、短期的な原料供給会社も同様に「原料供給会社の検証とリスク評価(Supplier Evaluation & Risk Assessment/SERA)」のプロセスを完了する必要があります。当社のこうした誓約は決して変わるものではなく、先日発表したインドでの事業拡大にも適用されます。
APPは当社工場に持続可能な木材原料を十分に供給するため、以下の2つの戦略に取り組んでいます。
●収率の向上と木材廃棄物の削減による効率化
●国際市場からパルプまたは木材チップの形で原料を調達する場合、すべての原料供給会社に対し、APPのSERAに定められた12の指標を順守するよう求めています。これらの指標のひとつは、FCPの順守誓約が施行されたときに明確に定められた「2013年2月1日以降、自然林の転換を行わない」というものです。 申し上げたいことは、このプロセスが公開されているという点です。新たな原料供給会社の候補は当社のFCPモニタリングダッシュボードに掲載されており、直近では、3月14日にジャカルタで開催されたステークホルダー・アドバイザリー・フォーラムの場でNGOやその他のステークホルダーの皆様による精査を受けました。
詳しくはhttps://asiapulppaper.com/system/files/fcp_february_2019.pdfをご覧ください。
現在、当社が調達している原料の96%は、長期契約を結んでいる既存の原料供給会社の植林地から供給されています。つまり、新規原料供給会社から供給されているのは、需要全体の約5%ということになります。
APPは事業の拡大に伴い、十分な量の原材料が供給できるかなど、必要なすべての詳細な調査を行ってまいります。インドの原料供給会社もSERAのプロセスを経て、FCPを順守していること、そして将来も順守し続けることを保証しなくてはなりません。
当社は、APPが直面している主な課題は第三者による森林伐採の対策だと考えています。これは森林再生に取り組むすべての企業とNGOにとっての課題です。原料供給会社の伐採権保有地内にある保護地域(*1)で発生している第三者による森林伐採に対処するため、APPはRADARSAT 2の技術である高解像度の衛星写真を利用して約380万ヘクタールを24日周期で監視し、森林被覆の変化をモニタリングしています。その結果、2013年から2015年にかけて5%以上あった保護地域全体の森林損失率が、2018年には0.14%にまで大きく減少しました。APPはさまざまなNGOと協力して共同森林保全管理とSMARTパトロールの取り組みを実施し、引き続き環境保護の取り組みを進めていきます。
APPの森林保護誓約の詳細については、https://asiapulppaper.com/sustainabilityをご覧ください。
森林管理協議会(Forest Stewardship Council/FSC)
APPは、林業会社との関係断絶を解消する際の包括的かつ一般的なロードマップ・プロセスに関する森林管理協議会(Forest Stwardship Council/SFC)の発表を歓迎しています。
この新しいロードマップ・プロセスによって、関係断絶を解消する際の複雑なプロセスに取り組むためのガイドラインと枠組みが作成されるものと、当社は理解しています。今後数ヶ月のうちには新たなロードマップ・プロセスを詳しく検討できるようになることを期待しつつ、新しいプロセスが強固で透明性の高い、公正なものになると確信しています。
新しいロードマップが策定されたとしても、APPはこれまで同様に当社サプライチェーン全体で自然林伐採ゼロを順守し、当社の木材供給会社と森林管理活動について全面的に開示し、FSCとの協力を続けて参ります。
社会紛争
FCPの重要な柱のひとつに、土地紛争の責任ある解決を含む地域コミュニティとの関係改善があります。2013年以降、APPは当社と原料供給会社が地域社会とどのように関わっていくべきかを示す方針とガイドライン、標準作業手順を導入し、特に、紛争の解決と「十分に情報を得た上での自由意思に基づく事前の合意(Free, Prior and Informed Consent /FPIC)」原則の順守に重点的に取り組んでいます。
APPは2018年12月時点で、操業地域内で確認された紛争の49%を解決に導きました。紛争の解決は時間のかかるプロセスであり、信頼を構築すると共に当事者双方の利益に配慮しなければならないという難しさの中で、この成功は励みになる進展です。こうした問題を解決するには、地方政府やNGOなど複数のステークホルダーとの共同取り組みが必要です。そのためAPPは、地域のNGOを含むステークホルダーの皆様が紛争解決プロセスの促進に参加できるプラットフォームとして、地域社会作業部会を設置しています。
土地紛争の解決におけるこうした課題は第8回ステークホルダー・アドバイザリー・フォーラム(Stakeholder Advisory Forum/SAF)で報告され、社会問題の専門家の意見によって、紛争の解決には政府の関与が不可欠であることが明らかになりました。第8回SAFのプレゼンテーション資料と議事録は以下のURLでご覧ください。
http://www.fcpmonitoring.com/Pages/All_documents.aspx?M=10&name=1425
泥炭地管理の進展
APPは泥炭地管理の進捗状況を定期的に報告しています。こうした進捗の中には、泥炭地の最善慣行管理計画の策定や、LiDARマッピングを活用した泥炭地の分布と地形のマッピング、森林火災を防ぐと共に自然林や泥炭地域に残る植林地を保護するために境界水路の水位を上昇させることを目的とした、5,000を超える堰堤の建設などが含まれます。
また、APPは長期戦略の一環として、高水位の泥炭地でも生育できる代替樹種の研究にも投資しています。また、リスクを軽減するために、木材供給会社の水の管理システムの改善にも取り組んでいます。APPは泥炭地の最善慣行を見出すための調査を続けて参ります。
APPは透明性を確保するため、ステークホルダー・アドバイザリー・フォーラムを通じ、FCPの実施状況と直面している課題をステークホルダーの皆様に対して直接に定期的に報告しています。APPはSAFにご参加いただけるステークホルダーの皆様を歓迎しています。APPがFCPを実施していく上で継続的に改善できるよう、建設的なご意見をいただけたら幸甚に存じます。
脚注*1 地域コミュニティの協力を得て策定され、政府の正式な合意を得た上で、持続可能な総合森林管理計画(Integrated Sustainable Forest Management Plan/ISFMP )において保護すべきと定められた地域